人類とウィルスの戦い

「人類史を振り返れば、世界全体に影響を及ぼす感染症の大流行は何度も繰り返されてきた」。(1957年に大流行したアジア風邪と1918年のスペイン風邪) いずれもインフルエンザのパンデミックで、前者では世界で110万人、後者では少なくも5000万人の死者が出た。

 

パンデミックかどうかに関わりなく、新型の病原体は短期間に急速に広がるか、長期にわたってじわじわと広がるか、いずれかのパターンを取ることが分かっている。

 

短期型は致死率が非常に高いため、感染の拡大は抑えられる。一方、長期型は「膨大な数」の感染者が出るものの、死者は比較的少ない。

 

新型の病原体は「ある時点で人口のかなりの割合が免疫を持つようになり、感染拡大に歯止めがかかる」のが通常のパターンだが、封じ込め策も流行を終わらせる効果がある。

 

史上最多の死者を出した1918年のスペイン風邪は、感染者が死ぬか、免疫を獲得し、ウイルスがとりつく新たな宿主がほとんどいなくなった時点で終息した。

 

1957年のアジア風邪はワクチンが早期に開発され、抗生物質で合併症が抑えられ、一部の人たちが免疫を獲得したことがあいまってコントロールできる状態になった。

 

2003年のSARSでは774人の死者が出たが、感染地域の封鎖や感染者の隔離など封じ込め策の効果もあって終息した。SARSは初期における診断が比較的簡単で、地理的に封じ込めが可能だった。しかし病原体が多くの国に広がり、感染が拡大しているため、封じ込めでは感染を阻止できず、せいぜい拡大のスピードを抑えることしかできなくなっている。

 

「ウイルスの立場からすれば、宿主を殺せば増殖できなくなり、存続できなくなる。うまく適応したウイルスは、宿主を病気にしても殺すことは無いので、新しい宿主に適応するにつれて、症状の重篤さが和らぎ、流行の猛威は収まっていくはずだが…

 

しかし、ウィルスは人間の体内に入ると、免疫に対抗する為に遺伝子変異を起こす可能性がある。遺伝子変異が起これば、免疫耐性が起こりウィルスは更に強力となり細胞を攻撃する事になる。これにより、感染すると今まで以上に重症化する可能性が高くなる。