マイナンバーカードの普及率

   政府はマイナンバーカードを、様々な官民サービスをネットワーク経由で利用するデジタル社会の情報基盤と位置づけ、2023年3月末にほとんどの住民が保有すると想定しているが、思いのほか伸びていない。

 

   日本以外の国ではどうだろうか。イギリスでは、一度、導入を検討したが国家が国民の個人情報を収集するのは、人権侵害に当たるとし、共通番号制度(国民IDカード制)は、「2010年5月に誕生した保守党・自由民主党による新連立政権」で、廃止に向かって検討。 「近く議会を通過し、法案成立後直ちにシステムが廃棄される」模様。「現在、国民IDカード制は停止中」。

 

   アメリカは、医療、介護、年金など社会保障や銀行、納税分野で利用。番号は可視化。それだけに、なりすましが横行し、犯罪の温床になっている。

 

「現実空間での取引に加え、サイバースペースでの取引(電子取引・ネット取引)にも汎用されていくことにより、番号が売買、垂れ流しされ、 不法行為に手を染める者の手に渡るなどして、アメリカ社会は、他人の社会保障番号を使った”成りすまし犯罪者天国”と化し、 社会保障番号に係る国民の情報コントロール権は、風前の灯のようになっている。

 

 被害者の窮状が社会問題になり、他人の社会保障番号を使った ”成りすまし犯罪”に対処するために、連邦や各州の議会、省庁が対策を練ってきているが、いまだ抜本策を見出すにはいたっていない」

 

   スウェーデンは、アメリカ以上に広範な分野で利用され、共通番号は無制限に一般に公開(可視化)されている。「アメリカに次ぐ”なりすまし犯罪者天国”」「共通番号は、マスターキーに使えば個人のプロファイリングが容易にでき、国家が個人の生活のいかなる場面にも入り込み追跡できる体制を敷く仕組みであり、 人間の尊厳の保障や個人の幸福につながらないとの鋭い指摘がある。

 

   日本での利用範囲は、アメリカ・スウェーデン型のように多岐にわたる案が示されているようだが、個人の資産・収入、健康状態が外から透けて見えてしまえば、 日本人の陰険なの気質からして、人を値踏みし、さまざまな人種差別が横行する可能性は否めない。

 

 そうなれば、プライバシーが保たれないばかりか、人間の尊厳も危うい。 加えて、なりすまし犯罪との絡みもある。ストーカー規制法を強化したようだが、個人情報の流用により、減少ではなく増加の一歩を辿る。また、国家権力の増長、末端で個人情報を収集する各種団体・組織の国家への追随も気になるとのこと。

 

   単に、利便性だけで制度を増やして行けば良いというのではない。我々の能力に見合った制度のあり方を考え、それを正しい方向に導いて行くというのが、 人間の人間たるゆえんである。

 

 また、既存の制度であっても、国民生活にとってリスクとリターンを比較し、 得るものが少ない、あるいはリスク大と判断すれば、潔く制度を撤廃することも必要である。共通番号制度(法案)に関していえば、どう見ても、 今の日本には、荷が重すぎる制度であり、日本の国民性に合っているとは決して言えない。国民の声を無視して、独自の判断で行うというのであれば、国家の進むべき方向性がどこか間違えている。

 

   今の国家は、果たしてどれだけの国民の信頼や信用力を持ち合わせているだろうか?無理に強いれば、国民に何らかの形で、負荷を与えることになり、 国家が弱体化することに国家自らが先頭に立って力を注ぐという愚昧を働くことになる。そうなれば、国民は、国家に失望し、国家からますます距離を置いてしまうだろう。