進化するクレーマー

   私は時折、企業や飲食店などのクレーム対応を行うこともあります。クレームとは、商品やサービスの提供を受けて、それの問題があったとして、苦情を言うか、企業に代償や補償を要求するものです。

 

 しかし、クレーマーの中には、問題が起こっていないのに、問題が起こったとして理不尽な言いがかりや難癖をつけてくる人がいます。最近では、SNSの普及により、情報コミニュケーション網が発達して、今まで1対1の関係だったクレームの構造が情報による理論武装へと変化してきました。

 

   情報社会とは恐ろしいもので、顧客一人のクレームで会社の信用を失わせることが可能となりました。わかりやす例としては1999年に起きた「東芝クレーマー事件」があります。これは、クレーマーを世に知らしめた事件となり「クレーマー」という言葉を広めるきっかけにもなりました。

 

東芝クレーマー事件
1999年、東芝のビデオテープレコーダを購入したユーザーで福岡県福岡市中央区在住のハンドルネーム「Akky」が、購入直後に製品の点検・修理の依頼をしたところ、勝手に改造されたうえに、購入した販売店東芝系列のサービスマン、そして東芝本社に交渉相手が変わり、たらい回しされたあげく、東芝の「渉外管理室」担当者が暴言を吐くなど暴力団まがいの応対を行ったとして、経緯や電話応答を秘密録音した音声「東芝のアフターサービスについて(修理を依頼し、東芝本社社員から暴言を浴びるまで)」と題する自身のウェブサイトにてリアルオーディオ形式の配信で公開した。

 

   録音されて公開されたテープの中で、ユーザー側が2点目の要求をするときに、「あなたも含めてですが、○○さんとかのお言葉遣いが悪過ぎる為、無礼を詫びて下さい」とあることから、暴言を吐いたのは「渉外管理室」担当者だけではないことがわかる。音声が公開されるまでに、複数の担当者が不適切な対応をし、ユーザー側の感情を害していた。

 

   現在、クレーマーは二極化しています。1つは、知的クレーマーです。このタイプは、企業対応、カスタマーサービスのての内を理解し、法律や条例についてもかなりの知識を持ち合わせています。中には、会社経営者以上に詳しい人間も存在します。

 

   知人の1人に、一流企業に勤めながら副業としてクレーマーとして利益を得ている人がいました。私はこの知人からクレーム対応のイロハを学びました。彼は、購入した商品にクレームをつけ、1ランク高い商品と交換させる手口を使っていました。家にある家電製品のほとんどがクレームにて交換させて商品だったのには驚きました。また、自宅近所で工事などが行われた場合は、絶好のクレーム対象となるとも言っていました。その方法はここでは明かせませんが、正真正銘のクレーマーです。

 

   しかし、法律に関しての知識も法律家を超えたずば抜けた知識を持っていました。法律の抜け道や、相手をどれだけ脅かせば自分の身に返ってくるか、企業の弱みはどこにあるかなども詳しく勉強していました。企業はこのようはクレーマーを積極的に向かい入れ、クレーム対応に当たらせると良いと思うのだが。

 

   もう一方は、無理難題を押し付けてくるクレーマーです。このタイプのクレーマーは昔から存在していますが、知的クレーマーと違い、あまり賢いとは言えません。しかし、この多くはすぐにキレやすく、暴力的な言動や行動に出やすいと言えますが、対処としては比較的簡単です。

 

   そもそも、日本の企業の多くはクレーマー対応を「現場に一任」している所が多く、その場その場で対応しているのが殆どです。会社がどの線まで対応するか、責任の所在はどこ(誰)なのかも不明確です。文化の違いなのか、日本が独特なのかわかりませんが、責任の所在をはっきりさせる文化の国は、クレーム対応もしっかりとしています。そこには、顧客対応の規範が存在し、対応もそのルールに照らし合わせて行われます。

 

   今後、ますますクレーマーは増え、中にはテロリスト化するクレーマーも出てくることでしょう。それらのクレーマーの場合は、従来のクレーマー対応では対処が不可能になることは間違いありません。