新型肺炎対策に米軍関係者が苦言

    新型コロナウイルスが蔓延する湖北省武漢から政府チャーター機で人々が帰国する中、政府の対応が杜撰であった。検査を拒否した帰国者を帰宅させてしまったこと。

 

    更に、隔離は個々別々にする事が基本だが、用意した施設は個室が足りない事から、相部屋になった人の中から感染者を出してしまったことである。

 

 米国も日本と同様に、政府チャーター機武漢から自国民を帰国させたが、その対応は日本とかなり異なっていた。

 

 使われたのは米軍が平時から契約している民間の旅客機である。米軍には「パトリオット・フライト」というシステムがあり、平時はいくつかのルートで本国と各国にある米軍基地との間をチャーター機が飛び、軍人やその家族、貨物などを運んでいる。

 

 チャーター機が到着したのはカリフォルニア州リバーサイド郡にあるマーチ空軍予備役基地。当初はカリフォルニア州アナハイムオンタリオ国際空港に到着させる案が出たが、セキュリティーを考慮し軍の基地に着陸させたという。

 

   理由は、基地内の方がセキュリティーが高く、関係者以外は立ち入りが禁止されていることと、基地内なら他者との接触を遮断し、衛生面でも管理ができる。

 

 途中、給油のためアラスカ州アンカレッジの空港を中継しているが、搭乗者はその都度、健康診断などを受けていたという。防護服を着用した人が彼らを出迎え、飛行機を降りた後はそのまま基地内にある収容施設に滞在している。

 

    基地内にいる軍人とは絶対に接触させない。軍人や軍関係者は一切ノータッチだ。そこはきっちりマニュアル化されている。対応するのはCDC(アメリ疾病対策センター

 

 日本では帰国時に検査を拒否した人がいた。人権などに配慮した結果、検査せず帰宅させたというが、米国ではこのような対処はあり得ないという。

 

   米国では、飛行機を降りた後、そのまま家に帰すことはない。体調が悪くても自己申告しない人もいるからである。また、発症していない人でも最低2週間は隔離する。抵抗力が強い人も弱い人もいる。発症するかどうか見極めるには、それぐらいの期間が必要である。

 

 日本では第1便帰国者に千葉県勝浦にあるホテルが用意されたが、収容施設を巡って地域や学校などで様々な差別が生じている。

 

    施設を提供したのはいいが、風評被害などその後はどうするのか。関係者のメンタル的な問題やPTSDの可能性もある。すでに、日本では関係者が自殺をしている。そういうリスクを日本政府は全く考えていない。基地内に収容施設を置けば、後日発生するだろうこの手のリスクは回避できる。

 

 日本ではチャーター機の旅費8万円を個人負担することが報じられて世論が騒ぎ、結果的に首相が国側が負担すると発言したが、米国では搭乗者にエコノミーのチケット代を請求するのが当然だという。

 

「日本人は甘えている。彼らは中国に勝手に行ったんだ、会社なら営利目的で行っており、費用は会社が負担する。旅行客は遊びに行っただけだ。彼らは政府や軍からの命令で武漢にいたわけではない。自費負担は当然だ」このような考えである。

 

 米国務省は1月30日、中国への警戒レベルを引き上げ、渡航を禁止し、過去2週間以内に中国渡航歴がある外国人の入国を一時的に禁止した。ロシアは中国との国境を閉鎖した。だが日本はまだ中国からの観光客を受け入れている。

 

「中国からの観光客はストップするのが当然だ。人権や経済損失の問題ではなく、Welcome Japanなどと言っている場合でもない。否応なしにGo Homeなんだよ。もし米国民だったら、自国へ帰れと言われても誰も文句は言わないだろう」

 

 各国で感染者が増えているが、思ったより感染者が少ない国もある。例えばインドやネパール、カンボジアだ。2月6日現在、インドの感染者は3名、ネパールもカンボジアも感染者は1名だ。

 

「衛生面で問題を抱えている国は、たとえ感染者がいても把握できない。アジア圏の感染者数はその国の衛生レベルの高さに比例している。ここにきて中国で感染者や死者が急増しているのは、もともと衛生面の意識もレベルも低いことが大きな要因だ」

 

 医療のレベルや衛生面での意識が高い日本で、新型肺炎が中国のように猛威をふるい死者が増えることはないだろうと米軍関係者は語る。だが彼はこうも示唆した。

 

「日本は米国と違い人口密度が高い国だ。感染が広がってしまうと、その確率は高くなる。感染拡大、パンデミック対策に必要なのは最悪のケースを想定することで、段階的に警戒レベルを上げるような計画ではない」