緊急事態条項とは

日本の新型コロナウィルスによる感染者数拡大により、新型インフルエンザ等対策特別措置法(2012年可決成立)改正案が3月13日、国会で可決成立、翌日から施行(効力を持つ)されました。

 

感染者数は、3月27日時点で1500人を越し、同法が規定する「緊急事態宣言」についての関心が高まっています。同法に基づき首相が緊急事態宣言をすれば、宣言に特定された区域の都道府県知事はさまざまな要請・指示ができます。以下では、条項をより詳しく説明しております。

 

緊急事態条項は「人間」を守るためのものでは ありません。「国家」「体制」を守るために憲法を ストップし、「人間を犠牲にする」ものです。

 

実際に、憲法学者である蘆部信喜氏による緊急事態条項の説明にも、「平時の統治機構をもって しては対処できない非常事態において、国家権力 が国家の存立を維持するために、立憲的な憲法秩 序(人権の保障と権力分立)を一時停止して非常措置をとる権限」だとあります。

 

自民党改憲案の緊急事態条項

第98条(緊急事態の宣言)第 1 項は、「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、 内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規 模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」として、法律で定めればいくらでも緊急事態の宣言ができるようにしています。

 

例えば大規模なデモやストライキを口実に緊急事態宣言をすることも可能です。しかも、「衆議院解散中」などの時期の限定がないので、いつでも緊急事態宣言ができます。


第 2 項は「緊急事態の宣言 は、法律の定めるところにより、事前又は事後に 国会の承認を得なければならない。」として事後承認でも良い上、承認の期限がないので放置もできます。


第99条(緊急事態の宣言の効果)第 1 項では、 「緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」とされ、国会を無視し、内閣だけで法律をつくることができます。政令を制定できる対象事項の範囲も決まっていません。

 

第 3 項では、「何人も、~国その他公の機関の 指示に従わなければならない。」とされ、私たちは罰則付きで内閣の政令に従わなければならなくなるでしょう。 「いつでも」「法律で定めさえすればどんな理由でも」「あらゆる事項について」人権制限できると解釈できます。


6 緊急事態条項が使われるとどうなる?
自民党改憲案の緊急事態条項は、あらゆる事項
について、人権を奪う法律をつくることができます。これはナチスの「授権法」ととても似ています。